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SLAM失敗事例③:動き方で合成できない場合がある

2026-02-06
うちの会社の近く。末広大橋の下です。
途中から青の点が消えている。そこまでの計測データだけで合成された。
メーカーの方の話では、現在の機種は以前のモデルに比べて、急な動きへの耐性はかなり向上しているとのことでした。
それでも、SLAMはやはり人の動きに影響される計測だと感じています。
急な動きをすると、それまで取得していたデータとの関連性が途切れ、合成そのものがストップしてしまうことがあります。
しかも、SLAMは解析を連続させるので、その後のデータは全て利用されません。

ここでは、その具体的な事例を紹介します。スクリーンショットを見てください。

途中で急にUターンを行い、さらに機械の向きも急激に変えたところ、その時点までの計測データだけで合成が完結してしまいました。
スクリーンショットを見ると、
・計測箇所を示す青い点が、折り返し後には消えている
・緑の軌跡から、折り返しが非常に急だったことが分かる
状態になっています。

当社で使用している機種では、計測中に仮の合成結果がリアルタイム表示されます。
その画面では問題なく合成されているように見えたため、計測中は安心してしまっていました。
しかし、実際のSLAM解析結果では、合成は途中までしか成立していませんでした。

前にも触れたように、現在の機種は以前のモデルより急な移動に対してかなり強くなっているそうです。
完全に途中までしか合成されなかったのは、この事例がこれまでで一度だけでした。
以前の機種では、そもそも本体を傾けることもできなかったと聞いており、ハードウェアとしては着実に進化していることも感じます。

加納

SLAM失敗事例②の対策:高架橋のような地形の計測

2026-02-05
高架橋のような場所では、橋そのものだけを計測対象として捉えると、同じ特徴を持った構造物が繰り返し現れるだけになります。
桁、床版、欄干といった構造が連続するため、SLAMにとっては位置や向きを判断する手がかりが乏しく、合成できなくなるのも、ある意味では当然だと感じています。
前に紹介した事例では、そのことに計測時は気づいておらず、後から点群を見て初めて違和感に悩むことになりました。
そこで意識するようになったのが、橋の外側にある構造物を、あえて特徴点として取り込むという考え方です。
高架橋の両側には、
  • 建物
  • 植生
  • 電柱
  • 擁壁や法面
など、橋の外側の景色が見える可能性が高い空間があります。
そこで、
  • 橋の中央だけをなぞるように進まない
  • できるだけ橋の外側が見えるようにSLAMの角度を傾けたり、少し外向きに構えたりする
といった工夫をするようになりました。
この方法では、橋の中央部は点群密度が低くなることがあります。ただし、合成できないよりは、密度が低い方がまだよいと割り切っています。
必要な箇所については、別の手法で補足する前提で考えるほうが、結果として早くよいデータが得られると思います。
 
なお、トンネルや暗渠内部のように、外側の景色を取り込めない空間では、この方法は使えません。
その場合は、
  • 人工的に特徴点を設置する
  • 目印となる物を多数配置する
といった対応が必要になります。
ただ、ここまでくると、SLAMの「手軽で早い」という最大のメリットは、ほぼ失われてしまいます。
多くの特徴点を設置する手間を考えると、ほかに選択肢があるのであれば、無理にSLAMを使わず、別の計測手法を選ぶ方がよいと思います。

 加納

SLAM失敗事例②:苦手な地形

2026-02-04
一見するとおかしくない解析データ。折り返しがおかしい。
別のデータ。遠目にはおかしくないが・・・
近づくと全くダメでした。
青い点が計測ポイントです。上りと下りで点の間隔が違って解析されている。
SLAMは、
 (1)3次元計測を行い、
 (2)計測データの中から地形の一致点を探しながら、
 (3)自分の位置と方向を推定し、
 (4)その位置を機械点として計測データの合成
を繰り返す手法です。
つまり、周囲の地形の特徴を手がかりに、自己位置を決め続けることで成り立っています。
そのため、自分の位置や向きを決めるだけの地形の変化がなければ、SLAMは安定して自己位置を推定することができません。

今回紹介した高架橋の事例では、一見するとまっすぐ進んでいるだけのように見えますが、実際には途中で折り返しを行っています。
さらに、上り勾配と下り勾配でSLAMが錯覚を起こし、解析結果では、
・上り勾配のときは距離が短く、
・下り勾配のときは距離が長く
計測されていました。

全体としては「なんとなく」合成されているように見えるため、何がどうおかしいのかが分かりにくく、この結果を見たときは、正直なところ本当に悩みました。
IMU拘束をかけても、後処理を行っても、このケースではほとんど改善が見られませんでした。

同じような状況は、トンネル内部のように、形状が単調で、視界の変化が少なく、高低差が連続する空間でも、起こり得るのではないかと感じています。

いろいろな方と話をすると、このようなケースへの対策として、色違いのコーンを置くといった方法を聞くことがあります。
もちろん有効な場面もあると思いますが、この事例を実際に経験すると、誤差のスケールがあまりにも違いすぎて、それだけで調整できるのだろうかと感じてしまいます。

SLAMを
錯覚させないためには、一致点が分かるように、なおかつ空間全体に変化があるようにする必要がある。
そんな印象を持った事例でした。

加納

SLAM失敗事例①の対策:どのように累積誤差を抑えるか

2026-02-03
今回は、その経験を踏まえて、累積誤差を抑えるために対策を整理します。
SLAM解析がブラックボックスなので、もしかすると合っていないかも知れませんが、1年間の試行錯誤の結果の注意点です。

1.計測範囲を分割する
先の事例では、約240mの計測に対して約0.5mのズレが生じていました。単純に割合で見ると、
約0.2%程度の誤差が出る可能性があるということになります。
この前提に立つと、一度に計測する距離を短くすれば、誤差の絶対量も小さく抑えられる、という考え方になります。
これを踏まえて、区間を分けて計測するといった運用に変えることで、誤差を小さくすることができています。
一度の計測が早いSLAMだからこそ分割してもストレス少なく運用できます。
2. IMU拘束による誤差蓄積の抑制
SLAMシステムにIMUによる推定位置を使った誤差補正機能がある場合、それを利用することで、誤差の蓄積を抑えられる可能性があります。
最初の頃はソフトの扱いがよく分からず、IMU拘束無しで解析をしていました。IMU拘束をかけてから、精度が少しよくなったかな?と思います。
その前提として重要なのが、計測前後のIMUキャリブレーションを丁寧に行うことです。
ここを疎かにすると、かえって不安定になると言われていますが、正直なところ、解析の内部がわからないので、どれだけ差がでるのかは実感できていません。
3.電子基準点の後処理用データを1秒データにする
SLAMシステムがGNSSデータをどのように利用しているかにもよりますが、後処理用のGNSSデータを1秒データにすることで、精度が向上する可能性を感じました。
普段は無料で利用できる10秒データを利用していますが、配信事業者の販売している1秒データを利用することがあります。これもSLAMは計測時間が短いので買っても大した金額にはなりません。
印象としては、XY方向では約0.2%程度だった誤差が、0.05%程度まで小さくなったと感じるケースがありました。一方で、Z値については大きな改善は感じられませんでした。
システム内部での取り込み方が分からないため、どれだけ効果があるかは一概には言えませんが、試す価値はある方法だと感じています。

2と3については注意はしていますが、はっきりとした効果を断言できるほどの確信はありません。
一方で、「計測範囲を分割する」ことについては、明確な効果を実感しています。
最近では、 求める精度に応じて区間を小割りにして、仮合成→基準点測量 → 再合成という流れを取ることで、精度の良いデータを得ることができています。

加納

SLAM失敗事例①:誤差が累積する

2026-02-02
上がSLAM点群、下が地上レーザー点群
黄色がSLAMの点群。スタート位置は精度が良い。
最後には50cmくらいずれました。
次は高さ。これもスタート位置は良さそうです。
最後は50cmくらいずれています。
SLAM実際に使ってみて誤差が確実に累積していくということでした。

SLAMは、既知の絶対座標を常に参照しているわけではなく、自己位置推定を積み重ねていく計測です。そのため、移動するたびに小さなズレが生じ、
そのズレが少しずつ蓄積していきます。

厄介なのは、この誤差は計測中にはわかりません。
解析後でも見た目だけを見ると、「それっぽく」合っているように見えます。
この事例は、使い始めた頃のもので、仕組みを十分に理解しないまま使っていました。 
その後、地上レーザーの計測結果と重ねて始めて ズレがあることに気づきました。
平面的なズレはヘルマート変換などで案外調整できますが、高さのねじれは後処理で簡単に修正できません。

実際はこの誤差を小さくするために、IMU拘束(移動量推定も併用)や経路をループさせて誤差を平均化する方法でズレを最小化します。
また、測量では標定点で座標化し検証点で誤差を確認し、計測後に必ず精度を把握します。そのため、ズレに気づかずに点群を利用することは少ないかも知れません。
ただし、こうした特性を理解せずにSLAMを使うのは危険だと、この失敗事例から思い知らされました。

加納
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